能という未知の体験をしたのは
年初のことだった。
半世紀ほど生きてきたけれど
まだまだ体験したことのないものは沢山あり
生きているうちに
日本人として知っておきたいもの、体験したいものは
どんどんやろう、と決めている。
幸いなことに
私の周りにはその道のプロフェッショナル、もしくは
マニアな方々が沢山いらっしゃるからww
おかげさまで
色々な体験をさせていただけている。
今回の体験は
能の世界の一部である謡(うたい)と摺足(すりあし)だった。
謡とは
能の舞いに添えられる歌謡
時にシテ(主役)やワキ(相手役)、ツレ(助演役)のセリフであり
時に物語のナレーションとなる。
発声がとても独特だ。
声を出す、というよりも
吐く息に声を乗せる、と教わった。
そして声を前に出す、というよりも
体の中に巡らせる、というイメージ。
だから独特の発声になるのかもしれない。
丹田に常に力を込めておくからなのか
発声練習を少ししただけでも
体がとても熱くなる。
うたい、というから”歌”なのかと思いきや
音階はない、という。
自分の出しやすい高さで声を出し
それを基本に音階を上げたり下げたりするので
節はある。
もちろん、楽譜などはなく
師匠のトーンを真似をしていく。
合っているのか間違っているのかはわからないが
そこは自分を信頼してやるしかない。
まるで人生のようだ。
次に摺足。
中学生の頃、剣道をやっていたので
摺足は若干馴染みがあるが
いかんせん、今は足の裏の感覚が鈍くなっている。
足袋を吐いて
畳の縁(へり)のラインを親指で感じながら
一歩一歩進んでいくのだが
足元を見ずに
感覚だけで進むのは容易ではない。
まして
自分の足長を把握しているわけもなく
足長半分だけ前に進んだり
一足長分、後ろに下がったりする感覚はズレまくっている。
自分の体なのに
こんなにも動かすのが難しいとは驚きだ。
扇子を持って振りをつけてくださったのだが
手と足の両方に意識を向けながら舞うのは一苦労。
まるで借りてきた猫のように
いや、単純にロボットのように
動き方がぎこちないこと、この上なし。
久しぶりにテンパった(笑)
終わってみればあっという間の90分。
能の体験第一弾はこれにて終了。
あー楽しかった♪
今回のワークショップでお世話になった
井上貴美子先生とツーショット☆
今回、やってみて思ったことは
今はネットがあるから容易に色々なことを検索することはできるが
昔は口伝で
というよりも
師匠の様を観察し、そこから各々盗んで学んでいったという。
つまり、一つのことを学ぶでも
思考錯誤の連続だったことは想像に難くない。
でもだからこそ
650年ものあいだ、語り継がれ受け継がれていった
伝統芸能なのだと感じた。
今回は非常に貴重な体験であった。
次回はあの人間国宝も立ったという
能の舞台での体験ができるという。
言わずもがなだが・・・
絶対参加する(笑)